コラム
COLUMN
書き方
「自分史」に、幼い頃に過ごした実家のことを書く
小さい頃に住んでいた、実家の間取りを思い出せますか。
まだ実家が当時のまま残っていればいいですが、引っ越したり立て替えたり大幅なリフォームなどによって当時の環境がすでになければ、思い出すのは難しいかもしれません。
人によって様々なケースはあると思いますが、幼少期の頃のことを思い出すうえで、まずは自分が過ごした実家のことを書いてみることをお勧めします。それがきっかけで、実家で巻き起ったエピソードがよみがえってくるはずです。
・一戸建て、マンション、団地、アパートなどのつくり
・庭の雰囲気、置いてあったもの
・玄関の雰囲気、置いてあったもの
・自分のいた部屋
・食事をしていた場所、食べたもの
・トイレ、風呂、洗濯機などの水回りのこと
・家電が置かれていた場所
・その他、家の間取りなどについて
これらの一つひとつの項目について、できるだけ詳細に一つひとつ思い出してみてください。ゆっくりと眼を閉じ、自分の記憶にある実家のなかを歩き回ると意外と思い出せるもの。いまもなお同じ家に住んでいたとしても、多少なりとも当時の雰囲気は違っていたはずです。
そうやって当時のことを思い出し、その都度メモをしていけば、それが自分史に書くべき最高の素材になります。家の中で巻き起こった家族や兄弟、友だちとのエピソードは、そのまま自分史に書くべき出来事だと思います。
エピソードは、取るに足らないほんの些細なことでもいいと思います。というよりもむしろ、些細なエピソードを詳細にわたって書くことが自分史の醍醐味とも言えます。自分史の面白味は細部に宿ります。ぜひ幼少期、家のなかで巻き起こった印象的なエピソードや出来事を、できるだけ細かく思い出してみてください。
最後に、自分の体験談を記してみます。本当に大したことのないあるある的なエピソードですが、それにまつわる自分の考えや後日談などがあると話の広がりが出てきて面白いと思います。
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「梅雨時の蒸し暑い夜、のどが渇いた私は麦茶が飲みたいと思い、2階の自分の部屋から1階に降りていった。家族は寝静まっており、リビングには誰もいない。狭いリビングの奥に狭い台所があるのだが、リビングの電気を付けると、台所にある小さなテーブルのうえに薄茶色の液体が入ったコップが置かれていた。おお、これはまさしく麦茶ではないか。
早くのどを潤したかった小学校低学年の私はおもむろにそのコップを掴むと、勢いよくその薄茶色の飲料をのどに流し込んだ。すると想像した味とは全く違う、それまで味わったことのないタイプの苦さが口のなかを駆け巡るではないか。条件反射的にその液体を吐き出した私は、その勢いで背後にあった冷蔵庫に後頭部をぶつけ、その場にへたり込んだ。そう、その薄茶色の液体は麦茶ではなく父の飲みかけのビールだったのだ。その経験がトラウマになったのか、大人になってからもしばらくは、ビールの美味しさがどういうものなのかよく分からなかった。もっとも年を経た今では、台所でビールを飲んでいた父のように、その美味しさの意味が分かるようになった。
それとこれは完全に余談だが、ちょうどその頃、2つ下の弟は父がどこかからお土産でもらってきたウイスキーボンボンを知らずに食べ、顔が真っ赤になって倒れたという事件があった。やはり子どもにアルコールは良くない」
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