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書き方

2019/11/09

「私小説」は「自分史」なのか?

「私小説」は「自分史」なのか?

 

小説にも、「自分史」的側面はあります。

 

自分史を書くうえで、誰かが書いた作品は非常に参考になります。しかし自分史は個別性が高いため、第三者の自分史を入手するのは意外に難しいもの。身内や周りで自分史を書いたことのある人がいればいいですが、そうでなければ自分史を納めた図書館に足を運ぶ必要があるなど、どうしても時間や手間がかかります。

 

そんなときに役立つのが、著名な作家が書いた私小説です。太宰治の「人間失格」など、誰もが知る文学作品は、意外と作者の体験談がつづられた私小説の要素が含まれていることは多いです。もちろん文学作品ですから創作部分もありますが、筆者の思考が主人公と重なっていることも多いので、特に精神的な面において「自分史」に近いものはあると思います。

最近ではお笑いコンビ・ピースの又吉直樹さんの『火花』、西村賢太さんの「苦役列車」などもそうですね。

ちなみに私小説とは「日本の近代小説に見られた、作者が直接に経験したことがらを素材にして、ほぼそのまま書かれた小説」のことを指します。

 

私小説の作品は他にも、

 

夏目漱石 『道草』

川端康成 『伊豆の踊子』『十六歳の日記』

島崎藤村 『春』『新生』

志賀直哉 『城の崎にて』

森鴎外『ヰタ・セクスアリス』『半日』

田山花袋 『蒲団』『生』

三島由紀夫 『仮面の告白』『荒野より』

大江健三郎 『個人的な体験』『取り替え子』

谷崎潤一郎 『痴人の愛』『蓼喰ふ虫』

村上龍 『限りなく透明に近いブルー』

リリー・フランキー 『東京タワー』

 

 

などが挙げられます。要するに名だたる小説家は総じて、私小説を執筆しているというわけですね。

「私小説≒自分史」ということを踏まえてこれらの作品を読んでみると、新たな発見や気づき、ヒントが得られるはずです。過去に何度かこの作品を読んだことのある方なら、また違った感想を抱くかもしれません。好きな作家がいるのであれば、その作家の文体を真似てみても面白いと思います。

 

もし、「自分史」を書くにあたって自らのことをさらけ出すことに抵抗を感じるのだとしたら、あえて「自分史」ではなく「私小説」というていで書いてみるのも一考です。

 

 

 

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