コラム
COLUMN
書き方
「自分史」で大切な5W1Hとは
自分史を書くにあたり、読者を惹き付けるための意識はしていますか。
以前の記事で、自分史の内容に抑揚をつけて内容を絞る方法を記しました。一方で、全体に抑揚をつけず時間軸に沿って淡々と書き進めながらも、読者を惹きつける書き方を紹介します。
まず改めてですが、分かりやすく伝わりやすい文章を書くためには「5W1H」が大切です。
When いつ
Where どこで
Who 誰が
What 何を(どうした)
Why なぜ
How どのように
ですね。
例えば「埼玉県警は30日、東京都渋谷区内で、埼玉県三郷市内の警備会社の金庫から現金3億6千万を盗んだ元警備会社の男(28)を、窃盗罪の容疑で逮捕した」というニュースがあったとしたら、
When:30日
Where:東京都渋谷区内で
Who:埼玉県警は
What:何を(どうした)埼玉県三郷市内の警備会社の金庫から現金3億6千万を盗んだ元警備会社の男(28)を逮捕した
Why : 窃盗罪の容疑で
How :
というように分けられます。Howがないですね。これと似たような文章で、小学生が書きがちな作文を挙げてみます。
When: 今日の学校帰り
Where: 近所のどんぐり公園で
Who: 僕とタケシ君は、
What: キャッチボールをして遊びました。(とても楽しかったです)
Why :
How :
こんどはWhy とHowがすっぽり抜け落ちており、事実だけを並べた面白みに欠く文章になっています。逆に言えば、文章の面白さや興味深さはWhy とHowかかっているとも言えます。
実は自分史も、自分が経てきたことを羅列していくと、ニュース原稿や小学生の作文のような淡々とした内容になってしまいがちです。「私は▲▲のとき、○○をした。そして◆◆のときは××だった」という感じの、単調な表現の繰り返しですね。
ではどうすれば、そうした単調さを避けつつ読者の興味を惹くことができるか。そにれはニュースや小学生の作文で抜けていた、「Why」「How」の部分を重点的に掘り下げて書くことです。読み手が最も知りたいのは、「なぜそうなったか」「どうやってやったのか」という、理由や方法の部分だからです。そこに至るまでの過程や動機と言い代えてもいいかもしれません。
例文を挙げて考えてみます。
「(When)先週の土曜日、(Who)私と7歳の息子とで、(Where)近所のゲームセンターに行き、(What)太鼓の達人で一緒に遊んだ」。
これだけでは、まさに小学生の作文です。この後、例えば「そのあと本屋に寄り、コンビニでアイスを買って帰った」というふうに事実を淡々と連ねると、やはり単調になって面白みはありません。
そうではなく、例えば最初のゲームセンターの文章に対して「なぜ」「どのようにして」という観点から出来事を掘り下げて詳述すると、内容の面白みは増します。参考までに、例文の続きを記してみます。
「(Why)実はその日の朝、息子が大事にとっておいた冷蔵庫のプリンを勝手に食べてしまったため、その罪滅ぼしとしてゲームセンター行きを提案したというわけだ。(How)最初は彼がどれだけプリンを楽しみにしていたかを延々と聞かされたが、妻に内緒でお小遣いを渡すと途端に機嫌がよくなった。久々に肩車して帰ると、ようやく彼に無邪気な笑顔が戻った。(オチのようなもの)後日談ではあるが、めきめきと体重が増えつつある息子を肩に担ぎすぎたせいで、今度は私の右肩がピキッとした痛みとともに壊れかけたのはここだけの秘密だ」。
といった感じでその出来事の背景にあるものや後日談を書けば、単なる事実の羅列にリアリティが湧いてくるのではないでしょうか。その表現が細かければ細かいほど、臨場感のある読み物として読者の関心を惹けると思います。
特に自分史においては、「なぜ、その決断をしたのか」「どうやってその困難を乗り越えたのか」といった部分は最も面白みのあるところ。ここ以外の部分でも、全体的にWhyとHowを意識することで、きっと書き手の人間性が伝わる素晴らしい自分史になると思います。