コラム
COLUMN
書き方
自分探しの旅で、自分は見つかるか
自分のことを、どれだけ知っていますか。
前回のコラムでは、「若いうちに自分史制作に着手するメリット」を記しました。ただし若い人は、自分史を書く意味や理由が分からない人が大半だと思います。若いときは自信過剰な傾向にあり、特に挫折をしていない人であればあるほど、すでに自分のことを全て把握していると考えがちだからです。
そのなかで自分を知るためによく行いがちなのが、「自分探しの旅に出る」こと。ただし自分探しの旅に出たからと言って、本当の自分が見つかることはほとんどありません。漠然と「旅をすれば何かが見えてくるだろう」と考えているのだと思いますが、そこに明確な目的がなければ、シンプルに旅を楽しんで終わりになってしまうからです。もちろん旅をすることは素晴らしいですし、自分の見分も広がりますが、それは自分を知ることには直結しません。
というよりも「自分探し」という時点で、すでに矛盾が生じています。いくら自分を探しに行ったとしても、「正解の人生」「本当の自分」など存在しないからです。むしろ自分を探すという言葉の裏側には、「今の自分はダメだからもっと他に何か道があるはず」という自己否定の意識が見え隠れしており、ある意味で自分探しの旅は現実逃避とも言えます。
では、どうすればいいのか。「自分を探す」のではなく、やはり「自分を知る」ことが大切です。わざわざ旅などに出なくとも、自分を深く知ることで導き出される答えは、すでに自分の心のなかにあります。
他者からどう思われようと、後ろ指を差されようとも、自分の心から湧き上がる感情を大切にして生きることができれば、自分で自分のことを認められます。そして自分を好きでいられます。それによって自己肯定感が増せば、より楽しく充実した人生を送れることは間違いなさそうです。
では、「自分を知る」ためにはどうしたらいいか。そのために有効なのが「自分史」なんですね。冒頭で触れましたが、「正解の人生」「本当の自分」などありません。でも、「自分はこうしたい」という純粋な思いはあるはずです。自分を深く知り、自分の奥底に眠る思いに気付き、実際にそれを行動に移すこと。そんな生き様が実は、自分のあるべき姿なのかもしれません。