コラム
COLUMN
書き方
「自分史」は完璧を目指さないほうがよい?
「自分史」は市販されている書籍のように、完璧な内容を目指す必要は全くありません。
もし非常に几帳面な性格の人だったとしたら、自分史を書くにあたっても、全ての内容を完璧に載せたいと思うでしょう。しかし実際問題として、膨大な情報量かつ、どのような形でも自由に編集できる媒体という性質上、完全無欠な「自分史」を作ることは不可能です。
完璧を目指しすぎるがあまり、理想と現実とのギャップからなかなか執筆作業が進まなかったり、途中で執筆を諦めてしまったとしたら、それは非常に残念なこと。自分史を書くにあたっての大前提として、「思い出せないものは思い出せないし、いくら調べても分からないことは分からない」という事実を念頭に置くことが大切です。どこかで割り切る気持ちが必要であるということですね。
では、何をどう書けばいいか。シンプルに、自分が大事だと思っていることだけを書けばいいと思います。もちろん人によって大事なことは違うので、これが正解といった明確な答えはありません。家族、仕事、趣味など、自分史に書けそうなネタは色々とありますが、これらの要素のうちどこを中心にするかを決め、それ以外の個所はあまり根を詰めずに簡単に触れる程度でもいいと思います。もちろん、様々な要素をバランスよく触れていってもいいですよね。
逆に言えば自分が書きたくないことや大事だと思わないこと、書くに値しないようなことは、一切書かなくていいと思います。つまり「自分の人生を全て網羅していなければ自分史とは呼べない」ということでは全くありません。何を書き、何を書かないか。その取捨選択も含めて、書き手の人柄が反映された自分史になるのだと思います。その意味で考えると「自分史」はまさに、自分の分身とも呼べるものだと言っていいのではないでしょうか。
繰り返しになりますが、大切なのは、自分が書くべきと思う内容を、自分の言葉で書くこと。意気込みすぎて、背伸びして書こうとしたり、ほかの人の意見を参照したり、誰かの受け売りで耳障りのいい内容を意識したりすると、どうしても歯の浮いたような表現になってしまいがち。そうなると結局、当たり障りなくつまらない内容になってしまうでしょう。ありのまま、自然体で書くのが理想です。
自分が強く心に残っていること、胸に響いたことを自分の言葉で素直に表すことができたなら、必ず思いは読者にしっかりと伝わります。自分の心の奥底にある思いに真摯に耳を傾け、シンプルに書くべきだと思うことを思い切って書き綴れば、きっと素晴らしい作品に仕上がるはずです。