コラム
COLUMN
書き方
心情の変化を「自分史」に記す意味
今回は、自らの心境の変化を踏まえた自分史制作についてです。
人は日常生活送るなかで、少しずつ考え方が変わっていくものです。自らの考えが定まっていない幼少期はもちろんですが、大人でも自らが身を置いている環境や映画や小説などの作品から影響を受けたり、周囲にいる人たちから刺激を受けたりすることによって、やはり考え方は変わります。成長する、と言い換えることもできそうです。
もちろん、本質的な部分はなかなか変わらないかもしれません。しかし、特に大人になってからは、社会で生きるための人間性が変わっていく人は多いです。顕著な例では、元暴走族の総長が人生経験を積み、いまは経営者として地域の慈善活動にいそしむ…なんてこともよくある話。
人は常に自らの最善を求め続けるもので、客観的に見たその方向性はさておき、無意識のうちに自らの理想に近づいていきます。自らが死の淵をさまようなど、衝撃的な出来事によって人生観が180度、変わってしまうケースも少なくありません。
そのなかで、自らの内面の変化を克明に記すことは、必ず内容の深さや面白さに繋がっていきます。読者は自身の経験と照らし合わせ、共感したり学びを得たりできるからです。
淡々と過去を振り返り、あのときはこうだったと客観的事実だけを並べていくよりも、そのとき自分がどう思ったか、どう感じてどんな考えからどういう動きをしたかといった心の機微を克明に記すことのほうが、読者の関心を惹けるのではないかと思います。
葛藤の末にくだす決断もまた、その描写がリアルであればあるほど大きな共感に繋がります。環境や刺激によって考え方が少しずつ変わっていくというのも、人間の奥深さなのです。
事実を羅列するだけでは、そっけない履歴書のようなもの。ですからぜひ、心の底から湧き出る感情や胸の痛み、そして心境が変化・成長していくさまの詳細を、自分史として記してみてください。その描写はきっと、読者の感動に繋がると思います。