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書き方

2023/02/07

「自分史執筆」は脳活性を生む

「自分史執筆」は脳活性を生む

自分史を書くにあたって最も大切なものは何でしょうか。それは、自分の脳にインプットされている過去の記憶。なぜならその記憶は、自分史の内容に直結するからです。そこでこの記事では、脳のメカニズムについて触れます。

 


■脳とは何か


そもそも、脳とはなんでしょうか。一口に言うと、脳は思考や行動、感情、記憶などを司る臓器。その重量は体重の約2%を占めており、おおよそ1500gほど。500mlのペットボトル3本分の重さを持つその脳が頭の中に詰まっており、それによって人の体や行動がコントロールされているというわけです。

 

脳はおおまかに言うと「大脳」「小脳」「脳幹」の3つに分けられ、それぞれの役割分担があります。まず、脳の80%の面積を占める「大脳」は、物事を考えたり、目や耳から送られてきた情報を分析した上でどう行動するか決めるなど、知的な部分を担います。また、感情のコントロールもこの大脳で行ないます。

 

次に「小脳」ですが、これは運動をコントロールする器官。歩く、走る、立つ、座るといった人間の動作が円滑に行なわれるように指令を出している部分です。「大脳」から運動の命令が出された際、「小脳」が体中の筋肉に指示を出すことで、その動きをしっかりコントロールしています。

 

大脳が社長だとしたら、小脳は部長みたいなもの。社長(大脳)の意向に従い、部長(小脳)は各部署にいる社員(筋肉)に細かく指示を出すことで、その仕事(動作)が滞りなく進むというイメージですね。

 

最後に「脳幹」。これは、生きるための働きをコントロールする器官です。呼吸をしたり、心臓を動かしたり、食べたものを消化させるなど、人間が生きていくうえで欠かせない動きを司っています。おなかが減ったり、尿意を感じたり、体温が一定に保たれたりするのは脳幹のおかげ。人間に自然治癒能力が備わっているのも、この脳幹があるからです。

 

 

■人間の記憶のありか


ここまで脳の簡単な役割について触れましたが、自分史に必要な記憶はどの部分にあるのでしょうか。それは、大脳の一部でもある「大脳皮質」です。大脳皮質は大脳の表面を覆う細胞層で、大脳の40%を占めています。

 

なお、自分史に必要な古い記憶が収められているのが大容量の「大脳皮質」。それに対して、数分前ほどの新しい記憶は容量の小さい「海馬」に一時的に保存されますが、そのほとんどは消え去ります。昨日食べた晩ご飯など、直近の記憶が意外と思い出せないのはそのためです。脳は「海馬」に一時的に保存された記憶のなかで、必要だと判断したものだけ「大脳皮質」に保存されるという仕組みになっています。

 

「大脳皮質」に保存すべき必要な情報だと「海馬」が判断する主な基準は、〝その情報が繰り返し入ってくる″かどうか。例えば勉強で暗記したい事柄があれば、その情報のインプットを繰り返すのが脳のメカニズム的に最も有効な手法です。逆に言えば、ちょっとニュースで観たり本で読んだくらいの情報は、すぐに忘れてしまうのが普通ということです。

 

また、たとえ一度であってもそれが自分の心に突き刺さる強烈な出来事であれば、それも長期保存すべき情報だと海馬は判断します。

 

結局、大脳皮質に残っている記憶は自分が繰り返し感じたことや行なってきたこと、印象的な出来事が中心です。その記憶が自分史を構成することになるからこそ、その内容は人によって千差万別。結果的に作者の意図とは関係なく、作者の価値観や作者が何を大切にして生きてきたかをうかがい知れるのも、自分史の面白いところだと思います。

 

 

■脳は死ぬまで鍛えられる


いろいろと脳の機能に触れてきましたが、実際問題として歳を重ねれば重ねるほど、徐々に物忘れが増えていくもの。ただ、それは大脳皮質に保存された記憶が失われているのではなく、加齢による脳の劣化で脳内の情報がうまく引き出せない状態になっているだけです。

 

実際、加齢とともに脳も衰えるというのが一般的なイメージかもしれませんが、最近の研究によると、特に知識や経験を蓄える箇所において「脳は死ぬまで成長させられる部分がある」ことが分かってきています。

 

・鍛えられる脳と、衰える脳

 

では、脳が成長する部分は脳のどの機能でしょうか。それを理解する前提として、大脳と小脳、脳幹を含めて脳の機能を下記の8系統に分類して考えてみます。

 


「運動」(体を動かすことに関する機能)

「視覚」(目で見たことを脳に伝える機能)

「聴覚」(人の話や音楽、生活音など、耳で聞いたことを脳に集める機能)

「思考」(物事を深く考えたり、判断する機能)

「伝達」(人と話したり、人に伝えたりするなど、コミュニケーションに関する機能)

「感情」(喜怒哀楽などの感情を表現する機能)

「理解」(言葉や様々な物事、状況などを理解する機能)

「記憶」(過去の記憶や情報、知識を蓄えておく機能)

 

以上の8系統のうち上から3つの「運動」「視覚」「聴覚」は、年齢による劣化は避けられません。「運動系」なら筋肉の衰え、「視覚系」なら老眼、「聴覚系」なら加齢性難聴といった具合です。

 

逆に「記憶」「伝達」「思考」「感情」「理解」に関しては、中高年からでも成長します。もちろん、意識的に脳を使わなければ衰えてしまいますが、常に活性化させることで鍛えることができるのです。

 

 

■脳の鍛え方


では具体的に、どうやって脳を鍛えればいいのでしょうか。ひたすら難問について考える、という力技も一つの手ですが、それだと疲れてしまって長続きしない可能性は高いです。

 

一方、比較的簡単にできることの一つとして、「見たいものを自分から探すくせ」をつけると効果的です。例えば街を歩いているとき、「赤いものを探す」と決めます。すると脳は、街にある赤いものを探すため、必死にフル回転してくれるのです。このように、何気ない時間でも脳をフル回転させることを意識すれば、おのずと脳は活性化していきます。

 

また「過去に読んだ本を読みなおす」「過去に観た映画を観なおす」といったことも、脳の記憶系を刺激する効果があります。その際に肝心なのは、過去に抱いたそれらの作品に対しての感想と、今の自分の感情とを比較すること。そうして考え方の変化に思いを巡らすことも、脳活性には効果的です。

 

 

■自分史制作で脳活性を


もちろん、自分史制作に必要な「過去の記憶をよみがえらせる」という作業も、脳活性において効果があります。

 

なお、人間の記憶は「連想記憶方式」とも言われます。連想という言葉のとおり、何らかのエピソードを思い出したとしたら、それにまつわる記憶も一緒に想起される仕組みになっているのです。
さらに、例えば「昭和から平成に変わったとき、自分は何をしていただろう…」というように、社会の現代史と自分史を重ね合わせることで、より思い出せる内容が増えていきます。

 

このように常に脳を活性化させ、できるだけ様々な記憶を鮮明にしておくことにより、脳は成長し続けますし、おのずと認知症予防にもつながります。もちろん「自分史を書く」という行為自体も、脳の活性化に役立つことは間違いありません。

 

 

■まとめ


人間は肉体的な衰えには抗いづらいですが、脳は常に回転させて鍛え続ければ、年老いてもなお進化していけます。そのなかで自分史は、脳を鍛えるのにちょうどいいコンテンツでもあります。脳を鍛えるという意味でも、ぜひ自分史の制作や製本に挑戦してみてください。

 

 

 

 

 

 

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