コラム
COLUMN
書き方
2023/01/24
「自分史」は人をアクティブにする
■自分史制作は積極的に動くための動機付け
「自分史」は、人をアクティブにします。
このことについて、意外に感じる人も少なからずいると思います。確かに〝自分史を制作する=文章を書く″ということですから、自分史を書くイメージとして、自宅の部屋にこもって黙々と執筆する姿を想像するかもしれません。
もちろん執筆作業は欠かせない要素ですが、継続して自分史を書き進めるには、そのためのネタを集めることも必要になります。
例えば実際に定年退職を迎えた人が、それを機に人生の総決算として「自分史を書いてみよう」と決意したとします。その際、まずは自分の記憶を頼りに書き進めるわけですが、ものすごく記憶力のいい人でない限り、思い出したくても思い出せないこともあるでしょう。
そんなときに効果的なのは、家族や知人、旧友に会ったり、実家に帰って卒業アルバムや日記などといった自分史制作における貴重な資料を集めたり、過去の自分が過ごした思い出の地を訪れたりすること。それにより、自宅の一室にこもって記憶を辿っただけでは決して思い出せなかった記憶が、必ずよみがえってくるはずです。
つまり自分の過去をとことん掘り下げていこうと思えば、自分にゆかりのある人や場所、モノなどを求めてアクティブに動き回るしかないのです。
これらのことを踏まえると、「自分史制作」はただ自分のことを記すだけでなく、〝自分が積極的に動くための動機づけになる″という点においても最適です。自分史を書くために上記に挙げたすべてのことをしようと思ったら、のんびりしている暇はないのです。
■自分史制作における恐怖は認知症リスク
特に定年退職を迎えた高齢者の場合、〝アクティブに動く″というのは大切なキーワードです。定年退職後も何らかの仕事に就いていれば、おのずとアクティブに動く日々を送ることになると思いますが、逆にそうでない場合、自宅でただ漫然と日々を過ごすという高齢者も少なからずおられます。
しかしそうやって社会生活から疎遠になってしまったとき、怖いのは認知症のリスクが高まること。仮に認知症になってしまうと自分史制作どころではなくなりますし、いつまでも心身ともに健康でいようと思えば、特に高齢者の方であればあるほどアクティブに活動することは大切です。
なお、認知症予防におけるキーワードは「十分な睡眠」「バランスの採れた食生活」「適度な運動」「過度な飲酒・喫煙を控える」「行動・思考をする」「周囲との人間関係を保つ」の6つ。特に後半の2つは、自分史制作を通じて充分に満たせる部分だと思います。
いま、80代後半以上の男性35%、女性44%が認知症であると推計されていますが、逆に言えばその歳になっても男性65%、女性56%と半数以上の方々は脳が健康であるということ。要するにアクティブに活動することを心がければ、過去の記憶もずっと覚えていられるということです。
もちろん自分史制作をしなくとも、高齢でありながら心身ともに健康でいられるのは素晴らしいこと。アクティブな生活を心がける一環として、自分史制作に着手するというのも一つの選択肢としてアリではないでしょうか。
■アクティブシニアでいられるために
近年では、アクティブに活動する高齢者のことを「アクティブシニア」と呼ぶ動きも出てきています。一般社団法人日本アクティブシニア協会では、「仕事や趣味などに意欲的で、健康意識が高い傾向にある活発な65歳~75歳の高齢者」とアクティブシニアを定義しており、例えばマーケティング業界ではこの層の消費傾向や嗜好を踏まえたサービスを開発しているそうです。
アクティブシニアの特徴として、「仕事や趣味に意欲的」「新しい価値観を受け入れる」「健康意識が高い」「自立意識が高い」「社会貢献への思いが強い」「自分の価値観やライフスタイルを大切にする」など、全体的にポジティブな思考を持っています。
自分の人生に意欲的な人ほど、歳を重ねても健康でいられます。実際、自分史を作ってみようと考える人の多くはアクティブな心を持っています。ただ現状として、すべての高齢者がアクティブかというと、そうではありません。そのなかで自分史は、アクティブではない人がアクティブになれる要素を秘めた貴重なコンテンツでもあると思います。
■ まとめ
「自分史」と聞いて、書くのが大変というネガティブなイメージを持つ人も多いです。しかし少し視点を代えて〝アクティブに活動する一環″として捉えることで、結果的に大きなやりがいに繋がるかもしれません。特に定年退職後で時間に余裕があれば、「自分史」は腰を据えて取り組むべきコンテンツにもなり得ます。
実際、定年退職後に充分に休んで心身ともにリフレッシュしたのち、そろそろ何かやろうかと考え始めたタイミングでおもむろに自分史執筆に着手する人も多いです。
自分のペースやタイミングで書き進められるという自由さや気軽さも、自分史のいいところ。締め切りなどもないので、もし思い立ったら自分のペースでコツコツと書き進め、ときにはゆかりの地を訪れたり、たくさんの人に会って旧交を温めてみてください。自分史がきっかけでアクティブな生活を取り戻すことができたら、それは素晴らしいことだと思います。