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書き方

2022/12/19

「自分史」は、誰が書くべきか

「自分史」は、誰が書くべきか
■自分史執筆の3パターン

自分史は、誰が書くべきでしょうか。

 
「自分史」というくらいですから、普通に考えれば当然、執筆者は自分でなければならないと思いがちです。が、書くのが苦手な人も少なからずいますし、必ずしも自分ですべて書き上げる必要があるとは限りません。もちろん自力で最後まで書き上げるのがベターですが、執筆に行き詰まったら〝他人に任せる(主にプロのライターや編集者など)″という選択肢も視野に入れておくといいと思います。
 
自分史の原稿をまとめるにあたり、大きく分けて3つのパターンが考えられます。
 
 
自分が書く
他人が書く
自分が書いたものを、他人に編集してもらう
 
 
これに関しては、自分に文章を書く能力がどれだけあるか、どれくらいのクオリティ(品質)にしたいかによってどれを選ぶかは変わってきますので、まずは①~③についてそれぞれのメリット/デメリットを挙げて考えてみたいと思います。
 
 
■①の「自分が書く」

 
自分史の原稿を仕上げるにあたって3つのパターンを挙げましたが、やはり「自分で書く」というのが基本です。まずは自分で書いてみて、難しいようであれば足りない部分をプロに書いてもらう、あるいは編集作業を依頼するという流れが自然です。それを踏まえて、①の「自分が書く」のメリット/デメリットを下記に列挙します。
 
 
【自分で書くことのメリット】
・自分のペースで書き進めることができる
・ページ数、分量、体裁などが自由に決められる
・費用がさほどかからない
・誰の目も通さないので何を書くのも自由
 
 
【自分で書くことのデメリット】
・全体的なクオリティが低くなりやすい
・内容や誤字脱字のチェックが難しい
・強い思いがないと途中で挫折しがち
・不慣れな作業で膨大な時間がかかる
 
 
 
これらをざっくりまとめると、「クオリティは微妙だし時間はかかるけど、自由に書き進められて余計な費用も掛からない」といった具合でしょうか。
原稿の仕上がりに関して言うと、自分史は市販されている書籍のように「販売益を得る」のが目的でなく「後世に残す」という側面が大きいので、それほどクオリティを気にする必要はありません。その意味では、原稿を仕上げるのは自力でも充分に可能です。むしろ、仕上げた原稿を製本するほうが自力では難しいので、この部分を専門業者に依頼するのがベターです。
 
・チェックは必要
 
ただし一度書き上げたものは、自力で仕上げたにせよ、製本する前に誰かの目を通すことをお勧めします。もし自力にこだわるのならば、その誰かは自分でも大丈夫。一度、書き上げた原稿から一週間ほど時間を置いて改めて読み直すことで、どの部分に加筆・修正したほうがいいかが客観的にみえてきます。これを繰り返していけば、より完璧に近い自分史の原稿に仕上がると思います。
 
その誰かがプロの編集者となると、③の「自分が書いたものを、他人に編集してもらう」のカテゴリに入ってきますが、そこまで大々的に手を加えたくないというのであれば、家族や友人など近しい人に読んでもらって不自然な点がないか、理解できない箇所ないかを確認する方法もあります。
 
基本的に、世のなかにある新聞や書籍、ネットニュースなどの文章が違和感なく読めるのは、ライターや編集者といった文章のプロがそうなるようにチェックしているからです。
逆に、例えばマンションの掲示板やエレベーターに貼られた注意喚起の文章に、違和感を覚えたことはないでしょうか。これは物件のオーナーが自分で考えた文章を、誰のチェックも入れずそのまま載せているケースが多いためです。このことからも、どんなに短い文章であれ、書き手以外の目を通すのがいかに大切かということが分かると思います。
 
さて、自分の力で書き上げた自分史の原稿はどうでしょうか。やはり主観で書き進める以上、特に書きなれていない人の原稿だとどこか読みづらい点や分かりづらい点、スムーズに読めない箇所が出てくるもの。それを第三者である周りの人に客観的に指摘してもらって初めて、気づけることは往々にしてあります。
 
正直、普通の人が違和感なく普通に読める文章を書くのは、意外に難しいことです。逆に言えば、違和感なくスラスラと読める文章を書くには、相応の技術と客観的な目線が必要です。だからこそ自分の書いた自分史を普通の人が普通に読めるか、確認してもらうのは非常に意味のあることなんですね。これは費用の掛かるプロの編集者に依頼せずとも、簡易に原稿の整合性をチェックできる効果的な方法です。
 
 
 
■② 他人が書く

 
次に「他人が書く」について、これはプロのライターや編集者に依頼するのと同義と考えていいと思います。文章を書くのが苦手だからと言って、自分史執筆を諦める必要はありません。法律のことを弁護士に依頼したり、自動車の故障を自動車整備士に依頼するように、できる人にお願いすればいいだけの話です。
 
このケースは基本的に、インタビュー内容をもとに構成されることがほとんどです。自分史の作者は自分史に残したい内容をインタビュアに話し、その内容をライターが本人に代わって執筆という流れです。大抵の場合、インタビューの録音内容を元に執筆・編集するので、実際に自分のことを話す際は内容が脱線したり時間軸がバラバラになったりしても問題ありません。
インタビューの担当者と執筆の担当者が同じ人というケースもあれば、別々ということもありますが、基本的には前者のほうが多いと思います。
 
このケースの代表的なものとして、例えばよくあるタレントや著名人の自伝などは、その多くが「ライターや編集者に依頼する」のパターンに属します。やはり当人のインタビュー内容を、ゴーストライターがまとめるという流れです。実際には大半を自分で書いていたとしても、一定のクオリティを保つためプロの編集者の手が加わっているのは間違いありません。
 
 
・プロが書くことのメリット/デメリット
 
 
プロに依頼する最も大きなメリットは、「誰が手に取っても読みやすい作品になる」ということ。文体は自分視点でありながら、自分以外の人が執筆を担うことで客観的な要素が加わり、結果的に伝わりやすくバランスの良い文章になります。逆に言えば、書くのが苦手な人が自分一人で執筆した自分史は、読者が理解困難な内容になりがちです(それはそれで、書き手の持ち味が表れていていいという見方もあるのですが)。
 
逆にデメリットとしては、時間の限られたインタビューだけでは細かい部分の意図を伝えるのが難しいため、自分の思いと若干相違のある文章に仕上がる可能性があるという点でしょうか。ただ、これはライターと原稿内容をすり合わせていくことで解消できる問題でもあります。
 
それともう一つの障壁は、それなりの費用が掛かること。費用はどれだけのボリュームにしたいか、またライターの経験やスキルなどによってピンキリですが、自分史のゴーストライターを依頼するとなると安くても10万円以上、大手新聞社がサポートするものだと製本込みで200万円を超えるようなサービスもあります。結局、業者ごとにサービス内容も価格も様々なので、直接問い合わせて比較するのが一番です。
 
まとめとして、「他人が書く」のメリット/デメリットを下記に挙げます。
 
 
【他人が書くことのメリット】
・文章が苦手でも自分史が制作できる
・文章のクオリティが高くなる
・自分史を執筆する手間が省ける
・主観的になりすぎず、読者のことに配慮した読みやすい文章になる
 
【他人が書くことのデメリット】
・細かい部分で、自分の意図した思いとの相違が出やすい
・相応の費用がかかる
 
 
 
 
③自分が書いたものを、他人に編集してもらう

 
「自分が書く」「他人が書く」以外の選択肢として、自分が書いた原稿を誰かに編集してもらうという方法があります。ここで言う他人とは、やはり主にはプロのライターか編集者。
どんなにまとまりのない原稿であれ、途中で書きかけて断念した原稿であれ、あるいはそれらが箇条書きやメモのような断片的なものだったとしても、きっとそれらをうまい具合に編集して、足りない部分は本人から聞き出すなどして、まとまりのある一つの作品に仕上げてくれるでしょう。
とにかく途中までは自力で頑張って書き進め、それでも足りない部分はプロに補ってもらうというイメージです。ざっくり言えば、「自分が書く」「他人が書く」の中間に位置する方法ですね。
 
例えば、自分史を書く際に過去のエピソードをバラバラに書き進めたはいいものの、それを最終的にうまくまとめられないといったときなどは効果的だと思います。あるいは、ある程度のところまで書き進めたが煮詰まってしまったというケースであれば、③のように自分が書いたものを編集してもらったうえで、未着手の残りの部分は②のプロに書いてもらうというように、その場面によって柔軟に対応してもらってもいいと思います。
 
 
・商業出版では必要不可欠
 
 
そもそも編集作業というのは、特に商業出版であれば必ず必要です。どんなに文章がうまい人の原稿でも、著名な作家の作品でも、第三者の目を通さずに出版することはあり得ません。内容の整合性が図れているか、分かりづらい言い回しになっていないか、物語の構成や順番は適切かなど、これらを読者目線でチェックすることでよりよい作品を目指します。
 
やはり作者だけの視点だと、その作品と近すぎるがあまり、どうしても勘違いしてしまっている表記や独りよがりの表現には気づきにくいもの。繰り返しになりますが、そのあたりの部分を、一歩引いた目線を持つ人に指摘してもらうことは非常に大事です。さらに商業出版では最終的に、専門の担当者(校正者)が誤字脱字のチェックをしたうえで世に出回るというわけです。
 
ただ、これはあくまで不特定多数の読者に向けた商業出版の話であり、自分史作成においては、必ずしも第三者による編集作業が必要なわけではありません。むしろ自分の独断と偏見で書き進めたほうが、書き手の人柄がにじみ出て面白いという見方もあります。
このあたりの判断は、自分がどんな作品に仕上げたいか、誰に読んでほしいか、読者に何を伝えたいか、あるいは何を感じ取ってほしいかによっても変わるでしょう。
 
 
 
■まとめ

 
自分史は誰が書くべきか。それはどんな作品に仕上げたいかで変わります。
例えば「自分の人生を見つめなおして自己成長につなげたい」のであれば、製本はさておき自分で書くことに意味があります。
一方で「自分の思いを後世に残したい」と考えているのなら、読みやすさや製本のクオリティといった観点から、プロの手を借りる必要がありそうです。
 
それでももし迷っているのなら、まずは自分でできるところまで試してみて、それで行き詰まったらプロに依頼するというのがスムーズではないでしょうか。
 
いざ自分史を書こうと思っても全く筆が進まなかったら、最初から自分で書くのは無理だと割り切って②の「他人が書く」を選んでもいいでしょうし、何となく書き進めたもののいまいちまとまらないというのであれば③の「他人に編集してもらう」、つまりプロの編集者に依頼するのもアリだと思います。何も編集のプロでなくても、身内の誰かに読んで感想をもらうだけでも原稿の質の向上につながります。
 
プロにサポートしてもらう部分の割合が5%であれ95%であれ、いずれにせよ完成した原稿ははまごうことなき自分だけの「自分史」。もし自分史執筆で煮詰まったら、〝自分史は自分で書かなければならない″という固定観念を取り払って、プロに依頼してみるのも一考です。
 
 

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