コラム
COLUMN

自分史の豆知識

2023/01/20

【1946年】自分史と関連付けて書きたい1946年の出来事

【1946年】自分史と関連付けて書きたい1946年の出来事

1946(昭和21)年に生まれた人は、今年(2023年)で77歳を迎えます。


■天皇陛下による人間宣言


この年は終戦から半年後に迎えた、文字どおり終戦直後と言える年。人々は数年ぶりに戦火を恐れずに済む正月を迎えたわけですが、まさにこの1月1日、昭和天皇が「人間宣言」を行ないます。戦時中に神格化された昭和天皇が自ら、「私は神ではなく一人の人間である」と宣言したのです。
これにより昭和天皇は戦争犯罪人としての責任を免れ、GHQ(連合国最高司令官総司令部)の目的を達成するためにその多大な影響力を発揮しました。

 

ただ、多くの日本人からすると日々生きるのに精一杯でしたし、そもそも天皇は神様ではないと知っていましたから、この宣言が大きな話題になることはなかったようです。

 

 

■好戦的な国家主義者6000名が公職追放に


人間宣言から3日後の1月4日、GHQは「公職追放」を指令します。これは戦争の政策に深く関わった役人や好戦的な国家主義者らを、公職や企業から締め出すというもの。これによって内閣の関係者や警察幹部、公務員など約6000人が一斉に辞めさせられます。さらに何もわからない子どもや学生まで戦争に巻き込んだとして、軍国的主義な教職員の約7000名が職を失いました。

 

要するにGHQは日本人を「戦争を推進した軍国主義タイプ」と「日本再生に必要な平和主義タイプ」に分け、前者を片っ端から切り捨てたというわけです。こうしたGHQの徹底した軍国主義排除の姿勢に難色を示す人も少なからずいましたが、結果的にこの「公職追放」は、日本の民主化における大きな推進力になりました。

 

また、これに付随して5月より、市ヶ谷の旧陸軍士官学校講堂にて「極東国際軍事裁判」が開始。連合国側が日本軍の指導者など戦争犯罪人を裁いた、いわゆる東京裁判です。A級戦犯(平和に対する犯罪)が28人、B級戦犯(通常の戦争犯罪)・C級戦犯(人道に対する犯罪)は合わせて約5700人で、死刑になったのはA級戦犯が7名、B・C級裁判では934人にのぼりました。

 

 

■戦後初となる衆議院総選挙



この年の4月10日、戦後初となる衆議院議員総選挙が行なわれます。これは、男女普通選挙を採用した初めての選挙。それ以前は、25歳以上の男性にしか選挙権が与えられていなかったのですが、この選挙から20歳を超える男女に選挙権が与えられたのです。
いまの高齢者のなかには、こうした新たな選挙制度について両親から聞かされた、あるいは両親と一緒に選挙会場に行った、などという記憶がある人もいるかもしれません。

 

なお、有権者数は約3700万人で投票率は今よりもずっと高い72%。有権者は男性が約1600万人、女性が約2100万人となっており、この数字の偏りからもいかに戦争で亡くなった男性が多いかが分かります。

 

このとき、最も国民の支持を得て与党になったのは日本自由党です。明治時代から続く帝国議会や大政翼賛会を中心とした戦時中の政治体制が崩壊し、戦前の政党を系譜とする主要な政党以外にも日本協同党や日本共産党といった新たな政党が次々に結成されるなか、自由な経済活動の促進や思想・学問の自由を掲げ、多くの国民から支持を受けたのです。なお、日本自由党は「民主自由党」「自由党」と党名を変え、1955年より現在の「自由民主党」になっています。

 

 


■日本国憲法の公布


そしてこの年の11月、「日本国憲法」が公布されます。日本国憲法の三大基本原理は「基本的人権の尊重」「国民主権」「平和主義」。特に、1889年に公布されたそれまでの「大日本帝国憲法」との大きな違いは、主権が天皇から国民に移った点でしょうか。要するに政治の最終的な決定権が、天皇から国民に渡ったということです。そして戦争が終わったことで、国民の義務は「兵役・納税」から「教育・勤労・納税」に変わりました。

 

また、第9条の「戦争放棄」もこのときに生まれています。戦力の不保持を謳いながら自衛隊が存在していることはどうなのか、国防のためには改憲が必要など、この条文の解釈を巡って様々な議論が交わされていますが、この憲法があるからこそ今の平和な日本があるといっても過言ではありません。ともあれ、中学の社会の時間に日本国憲法の前文を暗記させられた記憶がある人も多いのではないでしょうか。

 


■戦争を忘れさせるため娯楽が充実


GHQによる日本占領の基本方針は、非軍国主義化と日本の民主化。戦争のことを忘れさせるため、映画や音楽など様々な娯楽が普及していきます。特にこの年に顕著だったのが、漫画や雑誌、専門誌の充実。多様な漫画雑誌が創刊されたほか、総合雑誌では「世界(岩波書店)」や「中央公論(中央公論社)」、文芸雑誌では「群像(筑摩書店)」、趣味では「主婦と生活(主婦と生活社)」「ベースボールマガジン(ベースボールマガジン社)」「歴史読本(人物往来社)」など、現在まで続いているものも含めて様々な雑誌が発刊されました。夕刊紙で「サザエさん」の連載が始まったのもこの年です。

 

また、工業の分野では戦時中に空襲で多くの軍需工場が破壊されましたが、戦後に再生した各種工場では自動車やバイク、家電など、人々の生活に役立つ製品の生産を再開します。
特に、比較的安価に購入できた「ダイハツSE型(ダイハツ工業)」「みずほ号(三菱重工)」といった小型三輪車は、この年のヒット商品となりました。街で小型三輪車が行き交う光景を覚えている今の高齢者も、きっと多いと思います。

 

家電の分野では松下電器が開発した日本初の電器調理器具「電気炊飯器」が発売されて大きな注目を集めます。
秋葉原に電器街ができたのもこの頃。秋葉原の近くにある東京電機大学の学生が始めたラジオの組み立て販売が大盛況となり、電気関係の部品を扱う露店商が集まってきたことで電気街が形成されたそうです。

 

露店で言うと、東京では闇市の露店商が5万人を超え、新宿などの繁華街は闇市で扱う商品を求める人でごった返します。食糧難ながら人々は生きる希望にあふれ、新しい日本の基礎がつくられた年。それが1946年です。

 

 


〈1946年の流行語・世相語〉

・あっ、そう(昭和天皇が終戦直後の工場を視察した際に発した一言)
・赤バット/青バット(プロ野球界では青バットの大下弘、赤バットの川上哲治が大人気に)
・カストリ(粗悪な密造焼酎の俗称)
・カムカムエブリバティ(NHK第一放送でスタートしたラジオ番組「カムカム英語」のテーマソング。2021年にはこれを題材にしたNHK連続テレビ小説も放映された)

 

〈1946年のヒット曲〉
・リンゴの唄(並木路子・霧島昇による戦後初のヒット曲。♪赤いリンゴにくちびる寄せて だまって見ている青い空~)

 

〈1946年のヒット映画〉
・「荒野の決闘」(ジョン・フォード監督による西部劇。西部劇の傑作として知られる)
・「わが青春に悔いなし」(監督・黒澤明、主演・原節子。ファシズムの時代に弾圧された大学教授と学生たちの師弟関係を描く)
・「素晴らしき哉、人生!」(アメリカのファンタジードラマ。不朽の名作としてアメリカでは毎年年末にTV放映されている)


〈1946年に生まれた著名人〉
2月19日 藤岡弘(俳優。愛媛県上浮穴郡出身。仮面ライダーの主人公役として人気俳優に)
2月23日 宇崎竜童(歌手。京都府京都市出身。ロックバンド「ダウン・タウン・ブギウギ・バンド」としてデビュー。「港のヨーコ・ヨコハマ・ヨコスカ」で紅白にも出場)
3月17日 マギー司郎(手品師。茨城県筑西市出身。メガネ、口ひげ、黄色の燕尾服が通常スタイル。弟子はマギー審司など多数)
5月15日 美川憲一(歌手、タレント。長野県諏訪市出身。1972年に発表した「さそり座の女」が大ヒットとなり、星占いブームを牽引。近年はTVタレントとしても活躍)
6月6日 堺正章(歌手、タレント。東京都世田谷区出身。音楽バンド「ザ・スパイダーズ」でボーカルを担当。解散後は俳優や司会業など多方面で活動、ドラマ「西遊記」の孫悟空役で人気者に)
6月6日 中尾ミエ(歌手。福岡県小倉市出身。「可愛いベイビー」が大ヒットして一躍スターに。バラエティ番組では毒舌キャラとしての一面も)
7月11日 木の実ナナ(歌手。東京都墨田区出身。「東京キカンボ娘」でデビュー。劇団四季のミュージカル「アプローズ」がヒット作となり、舞台女優としての地位も確立)
8月18日 池永正明(元プロ野球選手。山口市下関市出身。西鉄ライオンズのエースとして活躍するも、黒い霧事件と呼ばれる八百長試合に関与したとして永久追放に)
9月18日 神谷明(声優。神奈川県横浜市出身。キン肉マンの主人公「キンニクスグル」北斗の拳の主人公「ケンシロウ」など数々のアニメ作品の声優として活躍)
9月24日 田淵幸一(元プロ野球選手。東京都豊島区出身。阪神タイガースの捕手として活躍。1975年には王貞治を抑えて本塁打王に。アニメ「がんばれ!!タブチくん!!のモチーフにも)
10月10日 菅直人(政治家。山口県宇部市出身。民主党政権時の2010年6月~2011年の9月まで第94代内閣総理大臣を務める)
10月25日 山本浩二(元プロ野球選手。広島県広島市出身。ドラフト1位で広島カープに入団し、18年間にわたり中心選手として活躍。大学出身者の通算536本塁打は日本記録。愛称は「ミスター赤ヘル」)
11月13日 大原麗子(女優。東京都文京区出身。1989年のNHK大河ドラマ「春日局」で主演し、同シリーズでは歴代3位となる視聴率32.4%を記録。「男はつらいよシリーズ」ではマドンナ役を2度経験)
11月20日 猪瀬直樹(作家、政治家。長野県長野市出身。1983年に作家デビューし、西武グループの堤義明と皇族のつながりを著した「ミカドの肖像」がベストセラーに。2012年から2年間、東京都知事を務める)

サービスに関するご質問、気になる点はお気軽にご相談ください。

090-6548-3331
9:00-21:00(土日祝除く)