コラム
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自分史の豆知識
【1935年】自分史と関連付けて書きたい1935年の出来事
1935(昭和10)年に生まれた人は、今年(2022年)で87歳を迎えます。
この年のキーワードは「天皇機関説」。これは一口に言うと「主権は国家にあり、天皇は国の最高機関として憲法に従ったうえで権力を行使する」という考え方のこと。
「天皇機関説」の対極にあるのが「天皇主権説」で、「主権は天皇にあり、天皇の権力行使に制限はない」という考え方のことです。
この言葉が話題になるきっかけとなったのは、2月に起こった「天皇機関説事件」です。天皇を神格化して戦争に利用したい軍部と、当時の内閣を批判する野党が結託し、国会で「天皇機関説」を痛烈に批判したのです。その結果、国防の観点から日々発言権を増していた軍部に押される格好で「天皇主権説」が幅を利かすようになっていきます。
昭和天皇自身は「天皇機関説」には賛成で、むしろ軍部に不信感を抱いていました。しかし国際連盟から脱退して世界から孤立した日本が軍事国家への道をひた走り、日増しに軍部の発言力が強まるなか、天皇陛下は国民を鼓舞するために祭り上げられたのです。終戦直後の1946年1月1日に「人間宣言」を発表し、実際には普通の人間であることをあえて周囲に証明したことからも、当時の昭和天皇がいかに国民から神格化されていたかが分かるでしょう。
そして、この年から日本は公文書や外交文書での国の表記を「大日本帝國」に統一することを決定。これもまた、独立国家に向けた日本の意識の表れと言えます。
ともあれ、この時期は軍事色が高まるなかで天皇とはどういう存在か、日本はどんな国なのかを考えさせられた人は多かったと思います。事実、「天皇機関説」を唱えて告発された法学者・美濃部達吉の著書が大ヒットし、その後に発刊禁止となる出来事などもありました。
すでにものごころがついており、この頃の独特の空気感を覚えている方がおられたら、ぜひ自分史に記してみてください。
なお、この年は大手家電メーカーが相次いで創業した年としても知られます。早川金属工業研究所(現:シャープ)、松下電器産業(現:パナソニック)、富士通通信機製造(現:富士通)などが相次いで創業、ラジオ製造など時代のニーズを掴んで一気に規模を拡大しました。
〈1935年の新語・流行語〉
・暁の超特急(短距離走者・吉岡隆徳が100m走で10秒3の世界タイ記録を記録して付けられた異名)
〈1935年の出来事〉
・大阪野球倶楽部(現:阪神タイガース)の創立
・丹那トンネル開通により、伊豆・熱海の温泉街が人気に
・早川金属工業研究所(現:シャープ)創業。ラジオ生産で一気に規模を拡大
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〈1935年に生まれた有名人〉
4月17日 畑正憲(動物研究家。福岡県福岡市出身。東大で動物学を学び、動物関連のエッセーなどで作家デビュー。愛称は「ムツゴロウさん」)
4月29日 仰木彬(元プロ野球選手、監督。福岡県中間市出身。元メジャーリーガー、イチローの名付け親)
5月15日 美輪明宏(歌手。長崎県長崎市出身。歌手のほか俳優・演出家・タレント・声優・コメンテーター・ナレーターなど幅広く活動)
6月29日 野村克也(元プロ野球選手。京都府京丹後市出身。捕手として戦後初の三冠王を獲得。弱小チームを優勝に導く名将としても知られる)
7月23日 朝丘雪路(女優。東京都中央区出身。宝塚歌劇団を経て、後にタレントとしても活動)
9月14日 赤塚不二夫(漫画家。満州国熱河省出身。代表作に「おそ松くん」「天才バカボン」「ひみつのアッコちゃん」など)
10月29日 高畑勲(映画監督、アニメ演出家。三重県伊勢市出身。アニメ「アルプスの少女ハイジ」「母をたずねて三千里」「火垂るの墓」などの制作を手掛ける)
12月20日 関口房朗(実業家。兵庫県尼崎市出身。人材派遣会社を創業して財を成し、後に馬主としても有名に。持ち馬の冠名は「フサイチ」)