コラム
COLUMN
自分史の豆知識
「自分史」や「自伝」を自費出版する罠
自費出版の罠はご存じですか。
「自分史」や「自伝」を書き上げたとして、「どうやって製本するか」というのは誰もが直面する問題です。自分で手書きしたものをまとめて製本すれば味わい深いものになりますし、専門業者に製本を依頼すれば市販の書籍とそん色のない仕上がるになるでしょう。一方で市販のノートに書き記していけば製本の必要はありませんし、紙にこだわらずブログ的な形でWeb上に自らの自分史的な情報を公開してもいいかもしれません。
そのなかで、クオリティの高さや仕上がりの美しさにこだわりたいのであれば、やはり専門の製本業者に依頼することをお勧めします。本格的なハードカバータイプや文庫本タイプなど、自分の好みの製本方法で仕上がれば満足度も高いですよね。
文章量の規定や編集作業の有無、レイアウトやデザインなど製本業者によって得意分野やクオリティは様々ですから、まずはインターネット等で様々な情報を集めてみるといいと思います。
ただし自費出版したものを書店に置くなど、書籍として一般の流通に乗せるには相当に高いハードルがあります。とはいえ、せっかく出版したのだから流通に乗せたい。そんな思いに付け込み、法外な出版費用を請求する悪質な出版素人ビジネスも世の中には存在します。印税収入を得たい、プロの作家と肩を並べたいなどといった憧れや夢を逆手に取ろうとするわけですね。
いったいこれはどういうことか。自分史に限ったことでなく、むしろ作家という職業に憧れている人が陥りやすい罠なのですが、その流れを簡単に記します。
❶ 文学大賞的なそれっぽい架空の賞をつくり、「大賞を取ったら賞金100万円、さらに作品は弊社で出版します」などと打ち出したうえで、騙したいと思っている対象、いわゆるカモ(素人の著者)を募る
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❷ 悪徳出版社は、素人の著者に対して「ギリギリのところで大賞を逃したが、その文才を埋もれさせるのは惜しい。自費出版を考えてみては」と切り出す。そして「いい作品なので売れたら元は取れる、その後は印税として不労所得が入ってくる」などと都合のいいことを言い、数百万円というあり得ない額の費用を素人の著者に負担させる
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❸ 作品の内容がプロのレベルには達していないうえに大した販促活動もしないため、ほとんどが売れ残る。当然、悪徳出版社も想定済み。出版をエサに素人の筆者が食い物にされた結果、残るのは自費出版した本の在庫の山のみ。ひどいケースになると、本の在庫を保管する倉庫の高額な使用料を別途請求されることも
要するに悪質な出版社は全てのリスクを著者に負担させ、万が一、売れたら売れたでラッキーというくらいにしか考えておらず、自分たちは絶対に損をしないという仕組みを作り上げているのです。この話を全ての応募者に持ち掛けていたとしたら、もはや詐欺と言えるレベルです。
とはいえ、これはごく一部の出版社の話で、ほとんどの出版社や製本会社はまじめに取り組んでおられます。きっと、ご自身が望むような「自分史」も製本してくれると思います。ただ、悪質な出版社の手口として、こうした実例もあるということを頭の片隅にとどめていただけたら幸いです。