コラム
COLUMN
自分史の豆知識
「自分史」はエピソード記憶の集合体
今回は、自分史制作の核とも言える「記憶」について記します。
「事実」と「経験」を保持するための記憶は大別して2つあります。「手続き記憶」と「エピソード記憶」です。
❶ 手続き記憶
自転車の乗り方や楽器の吹き方、泳ぎ方など、体が勝手に覚えてくれている記憶のこと。反復によって体に染みついているため、ほぼ一生忘れることのない記憶と言える。
❷ エピソード記憶
イベントや事柄の記憶のこと。時間や場所だけでなく、自らの感情が含まれる。脳の記憶や空間学習能力に関わる脳の器官である「海馬」に、過去のエピソードが記憶されている。
このうち、自分史制作に大きくかかわってくるのが後者の「エピソード記憶」。言ってみれば自分史は、エピソード記憶の集合体です。だからこそ、この記憶が何よりも大事になるのです。
何年たっても忘れない強烈な記憶がある一方で、数時間でさっぱり忘れてしまう記憶もあります。昨日食べた昼ご飯が思い出せないなんて、その最たる例ですよね。つまりエピソード記憶には、その強弱があるというわけです。その強く刻み込まれた順に記憶を辿ってそれを記すという行為がすなわち、自分史を書くということなのです。記憶に残っているということは、その人がそのエピソードを大事だと思っているという証です。大げさに言えば自分史は、その人が持つ思想や人間性そのものだと思います。
もちろん記憶力には個人差があり、幼稚園時の記憶が鮮明に残っているという人もいれば、小学校低学年くらいまでの記憶がほとんどないという人もいるかもしれません。ともあれ、強く刻まれた記憶というのは強い喜怒哀楽の感情を伴うケースがほとんど。要するにある出来事に対して自分が感じた感情が強ければ強いほど、自分の脳に刻まれやすいというわけです。
思い出せない記憶があったとしたら、誤解を恐れずに言えば「思い出すまでもない記憶」と考えることもできます。まずは自分の脳に強く脳に焼き付いているエピソードから丹念に書き綴っていくことが、自分史を書くうえでの王道パターンです。そうすることで自分の過去の記憶が広がり、結果的により多くのことを思い出せるのが、人間の脳のおもしろい部分でもあると思います。